こんにちは、吉田孝之です。

私は、工務店さんへの訪問コンサルティングを多数行っている。
私の仕事は「集客アップ」のサポートだ。

コンサルティングの初期は、社長さんとじかには話す機会が多いが、一定の方針が出ると、担当のスタッフ(主に女性)に対して、マーケティングの知識・ネットやパソコン技術を伝授する場面が多くなる。

女性スタッフに知識・スキルを習得してもらうために、彼女たちの話を聞きながら仕事を進めていくわけだが、現場でコンサルティングをしていると、社長さんや営業責任者と、女性スタッフの間の認識のズレの大きさに驚くことも多い。

今回は、私のクライアントである、抹茶工務店(仮名)の山本ルミさん(仮名)の入社当時の苦労話である。

抹茶工務店は、無垢の木材を使った住宅建築が得意で、リフォームや家具販売も行っている。年商は軽く10億円を超える。

ルミさんは年齢30代前半・独身で、抹茶工務店に勤務した当初は戸建住宅建築の部門に配属された。

パソコンが結構得意(というか好き)なルミさん、
今では、ブログの執筆、会社のフェイスブックページの更新、さらには販促用の資料(パンフレットやチラシ)の制作も担当している。
もちろん、集客アップの成果も出しているから、社内の広告担当として、各部門から引っ張りダコである。

ところで、抹茶工務店に限らないが、工務店の社員には、パソコンやネットが苦手な人が多い。
それもそうだ。だって建築の図面を書いたり、現場の施工の知識を学ばなければいけないから、パソコンやネットの習熟は後回しになる。

だから、パソコンや集客のノウハウを持つルミさんのような「工務店女子」が求められるのである。

さて、今では、社内でも本当に必要とされる人材になったルミさんだが、配属当初は、社長をはじめとした上司たちとの認識ギャップにかなり苦労した。

私の記憶に残っているエピソード。
それは、社長から「おーい、山本。おまえ、パソコンできるから、CADもすぐに使いこなせるようになるだろ。明日から設計の補佐もしてくれるか」と言われ、ルミさんが愕然とした話である。

ちなみに、CADとは図面を描くためのコンピュータのソフトである。これを使いこなすには、建築の知識が必要なのだ

以下、ルミさんと私の会話。

ルミさん
「吉田さん、聞いてください。突然、社長から、CADを使った図面作成の仕事をやれ、と言われました(大泣」

吉田
「え? だって、もともとホームページの修正とかチラシの作成が担当なんじゃなかったの?」

ルミさん
「ええ、そうなんですけど、設計の人手が足りないらしくて。うちの社長、パソコンが使えれば、CADで建築図面も簡単に描けると思っているみたいなんです。でも、私、建築の知識はないし、CADなんて使ったこともありませんし」

吉田
「まいったな…」

せっかく、これからマーケティングの知識や、ネットの技術を教えこもうとしている矢先に、設計の補佐に回されては、集客の仕事がおろそかになってしまう。

それにしても、パソコンが使えればCADが使えるだろ、というのも安直すぎる。たしかに最近のCADソフトは、操作方法こそ飛躍的に簡単になってはいるが、使う人に建築の知識がないと、危なっかしくてしょうがない。建築の基準を全く無視した建物が描けちゃうからだ。

というわけで、ルミさんに次のようなアドバイスをした。

吉田
「社長に、『パソコンが使えればCADができるって、そんな簡単なものじゃない。CADには建築の知識が必要だから、それなりの人を担当にしてほしい』と抵抗してみたら?」

ルミさん
「そんな!抵抗なんてできません。入社したばかりだし、ほかの人に聞くと、社長はワンマンで、怒りだすと手が付けられないとか言われてるし…」

ほかの社員の吹き込みも大袈裟である。
私からみれば、社長は、話のわかる、いい人である。
新入社員をからかったのであろうか。

とにかく、なんとかせねば!と思って、上司の営業責任者にかけあって、上手に社長を説得してもらったのである。

しかし、その後も、上司たちとの認識ギャップ「パソコンが使えるなら~」に苦しむことに。

「パソコンが使えるなら、じゃんじゃん集客できるチラシが作れるだろ」
「パソコンが使えるなら、ホームページからガバガバお問合せがくるようにできるだろ」
「パソコンが使えるなら、フェイスブックとかSNSをスイスイ使いこなせるだろ」

そんな馬鹿な!
集客するには、マーケティングの知識が必要だ。
それは、建築の知識に負けないぐらい大事なノウハウなのだ。
パソコンができれば、万能ってわけじゃない。

こうして、ルミさんの集客アップへの苦闘の幕が開けられたのであった。

(続く)